
Haydn: Sinfonien Nr.94 PAUKENSCHLAG, Nr.101 UHR
Berliner Philharmoniker – Karl Richter
楷書で書かれた名筆にたとえられる
ハイドンらしい機知やユーモアのある雰囲気を『驚愕』と『時計』には聴きたいところですが、リヒターの規律でしっかり隈どりされたベルリン・フィルの迫力ある演奏で唯一盤なのが良かった。
録音は1961年で、リヒターがベルリン・フィルを振った唯一の録音。バッハの時のような峻厳な演奏とは違い、ゆったりとしたテンポの中で時として厳しい表現を聴かせ極めてコクのある聴いて飽きないハイドンを再現しています。
録音は(独)DG特有の少し暗めの音色で木管の音は柔らかく、弦楽器は鋭く分厚い響き。超Hi-Fiではありませんが優秀な音質です。
均整のとれた体操選手の筋肉の動きに注視している時に感じるような、間近に定位する直接音重視の録音。ベルリン・フィルの弦楽セクションの十分の低音。ここぞというところのアタックは威力炸裂している。例を上げれば『驚愕』の第1楽章の出だし。ハイドンのシグネチャーといっていい穏やかに響き渡る序奏が、主題に移るところで感じ取られる馬力。フレージングに色彩感が感じられないから、墨をタップリと含んだ太い筆で書いた楷書のよう。筆運びのリズムに体操選手の筋肉の変化をユニフォーム越しに感じる動きを思わせる。
録音セッションが支度されたイエス・キリスト教会の響きの向こうに、指揮者の誠実さと生真面目さがバッハと相通じる精神性として現れています。
有名曲2曲だけだった理由はわかりませんが、ちょうど直前にカラヤンの録音契約が切れています。EMIとの契約も更新することなく、DECCAでウィーン・フィルと精力的に集中録音。リヒターとのセッションの翌月、カラヤンはバレエ音楽の組曲を忘れ物のように録音しているのは契約の調整だったのでしょうか。
その中に浮いている時期に、リヒター指揮でベルリン・フィルが録音しているわけです。
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